暗記ではなく、考えさせる社会科(評価: )
日本の大人たちにとって、今なぜ、スウェーデンの中学教科書が?! 確かに、わたしたちは社会に出てようやく自分の無知を恥じ、知識欲に目覚め、 あの時もっと勉強していればよかったなどと、学生時代を振り返ったりします。特に社会科は、答案用紙を埋めるため、一夜漬けの丸暗記を繰り返していたりして。。。
訳者は、まえがきで賢明にも本教科書の特長を指摘されており、それがあまりに的確なので引用しておくことにします。
1)実社会への手引きになっている、2)社会的存在としての人間にさまざまな角度から光を当てている、3)積極的な姿勢が貫かれている、4)子どもたちが自分自身の意見をもつことを徹底して奨励している、5)社会は自分たちの手で変革できることを教えている、6)文章が簡潔かつ明晰で、良く練られリズムがある。
また解説として、こういった教科書の背景となっているスウェーデンの社会や教育制度について丁寧な情報を加え、その実際の使われ方をレポートしてもくれています。
読み終わって、この社会科の教科書の中には、暗記で解答するような課題など一つもありませんでした。私たち自身が社会の中で生きているのだということを自覚し、その社会は複雑でいろいろな問題や考え方があって決して一筋縄ではいかないけれども、それをより良いものにしていくのは私たち自身に掛かっている、ということを学ぶためのものだと思いました。それこそ、私たちが一夜漬けの代わりに本当に必要としていたはずの、社会に密着した生きた視点だったのではないでしょうか。
皇太子さまがお読みになったことで有名になったという「子ども」という詩についても、そこに感動を誘う形で真理が描かれている、という理由だけで掲載されているのではありません。その真理がいかに理想的なもので美しいものであっても、それを実行することが困難な人たちがいたり状況があったりするという、決して綺麗事だけでは済まない痛切な現実から目を背けないようになっています。
社会の仕組みについて目的意識を持ってもう一度勉強しなおす機会が欲しい、そんな日本の大人たちにとっても文字通り最適の教科書ではないでしょうか。
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