人殺しと戦争と平和(評価: )
アメリカ軍において、第2次世界大戦で敵に向かって実際に発砲した兵士の比率は15〜20%であったという。それが、朝鮮戦争時には55%となり、ベトナム戦争時には90〜95%にまで劇的な上昇を見せた。
何故そういうことになるのか。自身も軍歴の長い著者は、この大部な本の中でその問題に分け入っていく。その分析は、膨大なインタビューや手記、また数多くの先行研究を引きつつ、戦場に置かれた一人一人の心の動きやそれを規定する諸条件をあぶり出していく。そのような環境や条件の下に置かれたなら、またそのような訓練を経たならば、読み手自身もここに書かれている行動パターンをはみ出すことは難しいのではないか。そう思わせるリアリティがこの本にはある。
繰り返し強調しておきたいが、本書は観念的・皮相的な戦争賛美や反戦論とはまったく趣を異にする。「他者を殺す」とはどういうことなのか。戦場に送られた兵士は何を見て、何に傷ついて帰還してくるのか。もし「戦争と平和の規範」というものが成立するとすれば、それは圧倒的な証拠をもってここに提示されている「人間の現実」を踏まえたものでなければならないと思う。
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