著者にはエッセイストとしてよりは、厳しい英語教師の役割を期待しています(評価: )
本書は「英語の壁」(文春新書)と同様に、日本人英語や日本文化に関して筆を執ったエッセイを集めた一冊ですが、著者は決してエッセイストとしては魅力的な存在だとはいえません。日本人の「学校英語」についてあれこれと提言をしてくれるのはありがたくもあるけれども、その論の展開がかつて誰かが何かの機会に書いたり発言したりしたものに似ているように感じられ、新鮮さに欠けます。ピーターセン氏のかつての著作ほどの発見や驚きが見られません。氏が岩波新書で発表した「日本人の英語」「続・日本人の英語」には随分と教えられることがあり、折に触れてこの15年、本棚から取り出しては読み返しています。あの時に味わった眼から鱗が落ちるような感激を求めて本書を手にしたために期待が大きすぎたのかもしれません。 ただし、映画「ローマの休日」を論じた章で、アン王女と記者ジョーとの間に肉体関係があったということが、濡れた衣服の乾く時間を示す英語の台詞から読み解けるというくだりには、はっとさせられました。著者によれば、その英語台詞の意味するところは日本語字幕に残念ながら十分には反映されていません。つまり、日本人は長い間この古典的名作を十全に理解することはできなかったといえます。日本語字幕制作者は随分と罪作りなことをしてくれたものです。
この評価・レビューへの支持:投票総数 30件中 16票の支持
|