アメリカを嘲笑していられるのは今の内だけ、成長率も起業率も日本が劣る(評価: )
貴重な指摘が多いが、本書は全体として巧みなプロパガンダ(政治的宣伝)である。著者の誘導に軽々しく乗っかって米国を嘲笑する向きが多いのは日本社会にとって危険極まりない。
これだけ富の格差が絶望的に大きく、医療に問題を抱えているにも関わらずアメリカの成長率は日本よりも高く、移民の流入によって人口も増え続けている。労働力人口の減少に全く危機感のないどこかの島国よりも遥かに将来性があるのだ。
本書は悲惨な貧困層だけに目を向けることによって、アメリカが巧みに最良の資質を持つ意欲的な人材を世界中から集めている事実を隠蔽しようとしている。アジアのトップ層の優秀な学生は大挙してアメリカの大学を目指し、西海岸ではインド系の多くの技術者や経営者が活躍している。また、起業の容易さとチャレンジを容認・評価する文化は我々の遠く及ぶところではない。こうした事情の紹介では小林由美女史の著作の方が遥かに勝っている。
超・格差社会アメリカの真実
90年代前半のアメリカでの暴動を見て多くの日本人が超大国の斜陽を哀れんでいたが、その後の数年であっと言う間に形勢逆転し、塗炭の苦しみを味わったのは我らが日本であったことを忘れてはならない。
アメリカにはこの貧困の解決に向けて果敢な挑戦を行っている個人や団体(例:コモングラウンド)も数多く、社会貢献の意識と活動の面でも日本は劣勢である。未成年も貧困層支援などボランティアを行うのが当たり前の社会なのだから。この分野に関してはロバート・フランク『ザ・ニューリッチ』と駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする』が非常に参考になる。
ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態
「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方
アメリカの窮状をいかに嬉々と論じても我々の社会が改善される訳ではないのは明らかであり、我々はアイルランドやイギリスの成長政策から学び、北欧やフランスの再配分政策を真剣に研究しなければならない。経済成長なくして社会保障制度の維持が不可能であることは自明の理である。
資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453)) (集英社新書 (0453))
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